VIOLENT VIDEO INFO ARCHIVE

本拠は http://m4oism.org/xxx

メス豚・犬の餌 工場

12月になり、酷寒の満州で青年期を過ごした父祖の遺伝子
が蠢き始めたせいか、近頃、猟奇ハンターと化していた私は
衝動的に肉が食いたくなり、それらを集めて今晩の糧食とす
ることに決めた。

肉とは言っても、私の胃は脂肪分の多い物を摂取すると九分
九厘、吐き戻す構造になっているため、比較的脂身の多い牛
肉は食えない。したがって鶏肉や豚肉が己の肉食のメインに
なる。松坂牛などは論外である。

そこで、私はボウフラのような下級階層民の集うスーパーマ
ーケットで目的のブツを揃えに行った。食料品は量販店でま
とめ買いしろ、という他人の発言に触発された為である。行
ってみると、そこは貧困の滲み出る不快な老いたメスブタが
大量(実はたいした数ではないが)に徘徊しており、私は呼
吸するたびに脳細胞が萎縮してゆくような感覚がしていた。
墓地でつまずいて転んだ後の二足歩行のような、そんな歩き
苦しい場所だった。

私は辺境のプチブルジョワジーの末子として世に生を受け、
金銭的には何不自由の無い生活を送ってきた。が、しかし現
在の零落し尽くした己には分相応な場所ではあるのかも知れ
ない。いや、私という存在の対義語はクソ・ババアであるか
ら、少し違う。

店に入って最初の野菜売り場には、まったく目を向けずに通
り過ぎた。私は野菜が食べられない。次の魚介類売り場では
足が止まった。せまい水槽に入った無数の貝類が、臓器みた
いな気味の悪い物体を四方八方に露出させており、食指が沸
いてしまった。サザエだとかのつぼ焼きは好きだし、入り口
のフタに爪を食い込ませて殻から内臓ごと引きずり出すとい
う食い方も気に入っている。

海の食材を使った料理によく「残酷焼き」という名称が付く
が、私は見たことも食ったこともなく、その言葉の響きだけ
で食欲を司る神経が勃起してしまう。英語にするとCruel
baking、鋭角的なスラッシュ・メタルに乗せる詩が書ける。
さしずめ、田舎のガキが田んぼの用水路で捕らえたザリガニ
に、気が済むまでダメージを加えた後、キチガイ・ジジイの
起こした不審火にあぶって食らうと言った所の物を、私は想
像している。

ところで、先ほどから私の神経を逆撫でし続けているのが、
魚売り場のスミに置かれた安物臭さいラジカセから垂れ流さ
れている「おさかな天国」とか言う、ふざけた動物虐待ソン
グであった。このような歌を聴かされてはせっかくの食欲が
減退してしまうし、勢いづいて性欲や睡眠欲まで萎えてしま
う。喜ばしいことだが。日本は不況だとかほざく、中年とそ
の取り巻きはその原因を外国人や国民性の堕落になすり付け
るが、本当の原因は日本人の頭が悪く商売が下手だからだ。

一人間のほんのささやかな食欲を踏みにじり、あっさりと購
買欲を失わせてしまい経済が停滞する。そんな事では今の若
い世代やこれから生まれてくるだろう子供たちの将来が危ぶ
まれてしまう。望ましいことだが。

ちなみに、私のアタマの中で経営されるスーパーの魚売り場
ではTHE STALINの廃魚(※1)が流れている。肉売り場では
グレート・ハンティング(※2)と喰人族(※3)とムツゴ
ロウがライオンだか、虎だとかに指を食われているシーン
(※4)をサイケデリックに編集した映像がエンドレスで流
されており、奥にひそむ店員はレザーフェイスのコスプレを
したフリッツ・ハールマン(※5)である。

(※1)「腐った魚が食いたくて〜♪」と始まる嫌らしいナ
    ンバー。アルバムFISHINN収録
(※2)わくわく動物ランドをスタイリッシュに進化させた
    映像作品。
(※3)日本全国、どの場末ヴィデオ屋のホラーコーナーに
    も必ず置かれているお馴染みのタイトル。
(※4)ムツゴロウ(畑正憲)は地球上のありとあらゆる生
    物を食う事に執念を燃やしているらしい。
(※5)ドイツの国民的殺人鬼。浮浪少年を自分の経営する
    肉屋に連れ込み、ソーセージにして近所に配ったり
    (戦後の食料不足で大変喜ばれた)闇市に売っぱら
    ったり(戦後の食糧不足で高値で取引された)して
    いた。死因は死刑。

私の様々な思いが去来するスーパーマーケットの中、漸くメ
インの肉売り場に辿り着いた。蛍光灯の光をずらりと並んだ
赤色の肉片が反射してか、その区画全体が薄いピンク色にな
っている。そこで新鮮な肉を眺めていたが、くだらない事を
考え過ぎたせいか、すでに己の食欲は皆無になっていた。

それでも来た以上は何がしかを買って帰らないと、食べる物
が家には何も無い。やむをえぬ理由で売春宿に来て、ヤりた
くもない気分なのに、どうしようもなくて、無理矢理に女を
選んでいるような、そんな時ほど引くのはやっぱりブスで病
気持ちだったり、する。

己の目にかなう商品はどれも値が張り、今の食欲状態ではと
ても値段に見合う価値のある物だとは、その時は思えなかっ
た。精肉屠殺業者はボッタクリだと思った。悩んだ時はいつ
もの通り、すべてがどうでも良くなってしまい犬のエサとし
ても共用できそうな、安価な魚肉ソーセージと豚の腸詰めを
大量に買って帰った。

−エピローグ−

家に帰って食ったら吐いた。そもそも臭いと色が開けた瞬間
でヤバかったし、慢性的な私の胃炎が一口目で反応した。そ
の時点で眼前に広がるこの畜肉のカタマリは破棄されるべき
なのであったが、それでもがんばって食べた。知性の欠片も
無かったガキの頃に読んだ歴史漫画で親鸞だったか何かの愚
者が、
「人間が他の生物を殺生するのは、それを食する時にのみ許
 される」
というセリフを言っていた、私はそいつを実践したようだ。
そこから見出したものは、猫やハムスターを虐待して殺した
ら食え、私怨や金目当て人を殺したら食え、自動車で誤って
人をはね殺したら食え、内ゲバで殺したら食え、自殺したら
自分を食え。さすればすべての罪が許され、また人間に生ま
れ変われます。私は拒否したい。

しかし、胃が痛い、吐き気がする、胸焼けがする、我慢がで
きない、思いあまって、居た堪れなくて、口惜しくて、片腹
痛くて、末端神経そうじもできない。もう、私は家畜用屠殺
銃を咥えて延髄撃ってノックダウンしたい(死体)。