VIOLENT VIDEO INFO ARCHIVE

本拠は http://m4oism.org/xxx

暴力描写研究入門

■1

フィクションとしての暴力描写(ハラスメントは除く)の研究家を
名乗ろうと思ったが、それには科学的根拠のある知識が必要不可欠
ではないかと考えウィキペディアで掻い摘んで調べた。

まず暴力とは何か。
『暴力とは他者の身体や財産などに対する物理的な破壊力をいう』
http://p.tl/BA6C

そして破壊とは何か。
『物に対し一定以上の負荷が加わると物が壊れることから、意図的
 に過激な負荷を掛けて壊す行為を指す』
http://p.tl/DaQw

これで暴力及び破壊といった行為の一般的な意味がおさらいできた。

次は暴力から生まれる具体的な損傷の区別が必要になる。とりあえ
ず人体を例にした場合、暴力的要因から生じる肉体組織の物理的な
変化は総じて『創傷』と呼ばれる。
そこから、切創・裂創・割創・擦過傷・挫滅創・挫創・挫傷・銃創
爆傷・刺創・杙創・咬創と、さらに分類される。傷の状態の詳しい
解説は下記のページを参考。
http://p.tl/n0m1

そして体表組織のみならず打撲による『骨折』、火や酸性アルカリ
性物質による『熱傷』、毒物による『中毒』の知識も必要となるだ
ろう。以下参考ページ。
骨折:http://p.tl/L3PT
熱傷:http://p.tl/kQJF 毒性学:http://p.tl/Aa6f

これに野戦病院や災害医療で用いられるトリアージ判定の知識を踏
まえれば、映画やアニメ、あるいは漫画や小説などで描かれる暴力
のレベルを分析する基礎が出来るのではないだろうか。
トリアージhttp://p.tl/GyOr

以上を基に『環境』や『武器』また『ファンタジー的暴力』の特性
といった要素に絡めれば、研究の素養が出来たと言えないだろうか。

■2

今度は暴力を発生させる際の人間の感情、あるいは心理的な状態の
基本を調べたい。

人間の感情は簡単に分けて喜怒哀楽と称されるが、生物学者のダー
ウィンは
『怒り』『悲しみ』『幸福感』『嫌悪』『恐怖』『軽蔑』『驚き』
の七つを生物的な基本感情とした。
さらに心理学者のポール・エクマンは
『喜び』『楽しさ』『満足』『困惑』『興奮』『自負心』『安心』
『罪悪感』を心理的な感情として分類した。
感情:http://p.tl/KqQO

人間の暴力は主にこの15個の感情を含んだ形で行われるのが分か
る。それは『怒り』による暴力や『恐怖』による暴力と言い表せる。
例えば『楽しむ』ための暴力や『満足感』のための暴力と言えば快
楽殺人者や加虐趣味者の視点となるし、『悲しみ』からくる暴力や
『罪悪感』からくる暴力と言えば複雑な心理状態が見て取れる。

まったく無感情な暴力というのは人間である以上有り得ないし、そ
れが可能なのは機械や捕食行為のみの動物・昆虫である。でなけれ
ば夢遊病者や極度の心神喪失者という稀なケースになる。

では映画『13日の金曜日パート2』におけるジェイソンの行う暴
力について考えてみよう。彼の行う暴力の根源は母親を殺されたこ
とや虐待されたことに対する『怒り』であるし、奇形である自分が
一般社会から受ける迫害に対する『恐怖』が憎しみとなって暴力を
発生させる。この2つの感情によって彼の暴力は説明できる。

では映画『地獄の黙示録』の主人公であるウィラード大尉の行う暴
力はどうだろうか。軍人としての『自負心』があるし、ベトナム帰
還兵として通常の社会に馴染めなくなった『困惑』がある。敵国兵
に対する『嫌悪』があるし、兵士として戦う『楽しさ』もあっただ
ろう。しかしカーツ大佐の王国に辿り着いてからの彼の暴力を簡単
に感情や心理状態に結びつけるのは難しい。それを映像の中から推
測するのが暴力描写分析の愉しみと言えるだろう。

ついでに映画『ゾンビ』で登場するバイク軍団の暴力はどうだろう
か。ゾンビが大量発生したことによる『恐怖』。それから逃れ『安
心』を得るための暴力。社会の無秩序に『興奮』した暴力。物資を
略奪する『喜び』としての暴力など、様々なパターンが読み取れる
しゾンビの視点で見れば夢遊病や極度の心神喪失という稀なケース
になる。

この15個の基本感情は暴力を行う側だけでなく暴力を受ける側に
も結び付けられる。様々なケースは考えられるが、大抵は『恐怖』
という一点で片付けられるだろう。暴力を受けて『喜ぶ』なんての
はマゾヒストだ。
無論、すべての暴力が15個の感情に結び付けられる訳ではないが
これ基本として据えておけば凡その見当が付くのではないだろうか。

■3

今回は暴力の行う側と受ける側の置かれた関係性について調べたい。

暴力が発生した際それを行う側と受ける側の関係は大きく分けて以
下の3つと考える。
『無抵抗な者に対する暴力』
『抵抗する者への暴力』
『相手に気付かれない形での暴力』

まず『無抵抗な者に対する暴力』とは。
暴力を行使した場合に、対象から一切の反撃を受けないものを指す。
例えば手足を完全に拘束された人間や抵抗意志が無い者、あるいは
できない状態をこれに入れる。例えば拷問や航空機等による、対空
兵器を持たない対象への暴力がこれに当たる。対象が人間や動物ば
かりでなく建物や植物などの物体もこれに含む。この暴力は行う側
の能動性によって発生し対象はそれによる肉体的・物体的な損傷を
もって描写される。

ただし、例えば民家の窓ガラスを破壊した場合窓ガラス自体は無抵
抗な物であるが民家の住人にすれば、それは次に述べる抵抗する者
への暴力と繋がる可能性がある。

次は『抵抗する者への暴力』とは。
暴力を行使した場合に対象から反撃を受ける、あるいは両者とも相
手に暴力を行う意志をもって生じる関係である。暴力と暴力の応酬
であり、これは一般的な戦闘状態と言うことができる。この関係か
ら生じる実際的な動きを、もっとも実戦的と呼ばれるイスラエルの
軍隊格闘術クラヴ・マガでは、戦闘の基本動作を以下のように定義
している。

・脅威の排除
・怪我の防止
・防御から攻撃への素早い転換
・反射神経の利用
・ダメージを与えやすい部分を狙う
・近くにある道具や物体の利用

これが暴力対暴力の合理的な動作であるとした場合、これらが極端
に欠落した暴力描写は非合理的なものと呼べる。これは少数対多数
であっても同じである。無論、すべてが合理的な描写である必要は
無いのであくまで基本として頭に入れておきたい。
クラヴ・マガ:http://p.tl/71ca

そして『相手に気付かれない形での暴力』とは。
これは暴力を行う側が、抵抗する意志の有るもの無いもの問わずそ
の意志を決定する間も与えず発生する暴力である。これは暴力を受
ける側が、暴力を行う側の存在を意識しない状態で描写される暴力
と言える。一般的に奇襲・暗殺・不意打ちと呼ばれるものである。

これは先に挙げた2つの暴力の前哨行動にもなるし、抵抗する者を
無抵抗な者へ強制的に変化させる暴力にもなる。『抵抗する者への
暴力』で述べた戦闘状態を回避することもできるが、複数人で応酬
される暴力においては戦闘状態の延長線上にある行為と言える。よ
って『相手に気付かれない形での暴力』とは状況に応じて有為転変
に描写されている物と位置付けられるのではないだろうか。